宝石よりも
ゆっくりと彼女に近づいた。
彼女の眠りを妨げないように、そっと、静かに。
窓辺には誰が置いていったのか、綺麗な花が花瓶に生けてあった。
生命力に溢れる花は、この部屋に明るい力をもたらしているようだった。
ベッドの上で眠る少女の髪に、手を伸ばした。
そっと撫でれば、サラサラとした髪が手を滑らせた。
久しぶりに彼女に触れた。
罪悪感とともに、じわりと広がる幸福感。
「七海」
思わず名前を呼んでしまった。
と、彼女がぴくんと動き、目をうっすらと開いた。
俺はあわてて手を引っ込め、彼女を見つめた。
目を開いた少女は俺のほうに顔を向け、とろんとした目で見つめていたが、しばらくしてから目を丸くした。