宝石よりも

「やっと、来て、くれたんだ……」



七海の目から雫がすっと溢れて、丸く白い頬を伝った。



「ごめんね、七海。今まで来れなくて」



七海はゆるゆると首を横に振った。



「気持ちはわかるから、気にしないで」



臆病者の、弱い俺。



会いに行くのが怖くて一度も会いに来なかった。


あの日から。




あの、晴れた暑い日の、

汚れた記憶の中の日から………



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