宝石よりも
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『ナナちゃーん、置いてっちゃうよー』
『待ってよー!』
幼い俺と七海。
あの日は確か、午前中は家でトランプをして、午後から一緒に海のそばにある公園に行くことになっていた。
『カイちゃん』
もたもたと靴を履く七海を玄関先で待つ俺に、庭で水撒きをしていた母さんに手招きされてそばに駆け寄った。
『ナナちゃんをしっかり見てるのよ。怪我したりしないようにね』
『うん、わかった』
あの時俺は元気よく頷いて、靴を履き終えた七海の小さな手を引っ張って公園に向かった。
晴れ渡った、夏の暑い日。
向日葵がきれいに咲いていた頃。