宝石よりも

「どうかした?」



カイのことを思い出して、うつ向いてしまっていたらしい。


私はあわてて顔をあげた。



「な、なんでもないです」



別の男の人のことを考えていた、なんて。


とても言えない。



「美夜……」



私がまた顔を下げかけていると、急に由良が私を抱きしめてきた。



驚いて顔をあげると、唇を塞がれた。


唇に感じる柔らかな感触。



「……っ、いや!」



手に衝撃を感じて目を開くと、彼を突き飛ばしてしまっていた。


床に手をついたまま驚いた表情でこちらを見上げている。


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