宝石よりも
「あ…あ、ごめんなさい」
おろおろしながら謝ると、由良はふっと笑って立ち上がった。
「気にしないでいい。きっと久しぶりに会って緊張してたんだね」
由良はもう一度私を抱きしめたあとでドアに近づいて、ドアノブを握り振り返った。
「今日はもう帰ることにするよ。じゃあね、美夜」
「……はい」
パタンとドアが閉まって由良が遠ざかっていくのを確認してから、ゴシゴシと口を擦った。
―――気持ち悪い
カイには感じなかった嫌悪感が残ってる。
……私、知ってるの。
由良は私一人を好きなわけじゃないこと。
他にもたくさん女の人はいて、もちろんキスだってしてることも。
カイのキスは優しいのに、由良のキスは優しさなんかなくて、ただの行為でしかない。
ぽろりと目から涙が溢れた。