たとえばこんなスクールライフ
小さなステージに上がり、私はクラスメイト達の注目を浴びます。

本当は人前に立つのなんて苦手で、注目されるのなんて恥ずかしくて…。

だけど。

「こんなに楽しい時間を用意してくれた皆に、お礼はしなきゃですよね…?」

マイクを両手で持って、スゥッと深呼吸して。

流れ始める伴奏に乗って、私は歌を奏でます。

一生一人だと思っていた、笑顔で他人と接する事なんてないと思っていた、悪魔の私にこんな楽しいひと時を提供してくれた皆に、精一杯の感謝の気持ちを込めて。

きっと、これまでで一番気持ちを込めて奏でた歌。

それは言霊の調べでも魔法でもない、何の変哲もない歌だったけれど。

みんなは静かに、私の奏でる歌声を聞き入ってくれました。

…きっと、私の込めた気持ちはみんなに伝わった。

私は今でも、そう信じています。

< 55 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop