生きる。
「ただいま…」

「涙ちゃん、おかえり」

寮に戻った私は貴由に愛想笑をして、和泉の指輪を箱にしまった。
貴由というのは寮で同室の宇野 貴由 ウノ キユ。

カノジョは私と和泉の関係を一番深く知っている。
いつも、何かあれば必ず貴由になんでも相談していた。

無垢な貴由の笑顔が私の涙を誘う。



「っ…貴由…」
「涙ちゃん?…どうしたの?」

なにも言わず、ただポンポンと背中をさすってくれる仕草が、また和泉を思い出させる。
「涙!宿題わかんね…ぇ…」
「涙ちゃぁん!助けて……?涙ちゃん?」

大きな音を立ててやってきたのは隣の部屋の双子、工藤 都 クドウ ミヤコ と工藤 雅 クドウ ミヤビ だった。

二人のドアの開け方も、和泉にソックリで悔しいほど涙がでる。

「…っ……」
『なに?泣いてるの?』

オドオドとする都と雅を、今日はおもしろいとは思えない。

和泉



和泉




和泉




和泉に会いたい








和泉ー…









< 36 / 72 >

この作品をシェア

pagetop