生きる。
一分ぐらいたった後、コップを持った宇野が走ってくる。
その間に俺は薬を四錠、貧血が起こったときの薬を二錠取り出していた。

「はい…」

おどつく宇野の手から、コップを奪い取り、一気に片手の薬を飲み込んだ。

…よかった。
これで多分救急車を呼ぶ必要はないだろう。

なにも話さない宇野に俺は笑いかけた。
それは、苦笑いでもなく、愛想笑いでもなかった。
心からほほえんだ。
「……今のは…」

「走らせるなよ」

おかげで死にかけました。なんて言いやしない。
 むしろ、おれがどんなに弱っているか教えてもらえて、感謝していた。

「お前のことだから¨なんで涙花にあんなこと言ったんだ¨…だろ?」

「…うん」

「なあ、エイズって知ってる?」

もう一度水を飲みなおし、横目で宇野の目とあわせる。

「知ってるよ。私、医者の娘だもん」

「俺、エイズ。ならわかるよな…

  俺、死ぬんだよ」












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