嘘つき③【-束縛-】
「冴木は可愛いな」
部長がフと笑う。
曲がった優しい瞳に戸惑うけれど、惹きつけられて仕方ない。
「…君を見ていると思い出す」
「え?」
部長の言葉は自然であたしは聞き返したけれど、それが何なのかどうでもよかった。
「冴木の様に、過去に後悔がなければ前を向いてられるんだろうな」
部長?後悔、その単語に胸がチクリとする。
「後悔、ありますよ。誰だって。後ろを振り返らない人なんていないです。振り返るから、前を向いてられるんです」
あなたに何かあったのかもしれない。だけどあたしは知らないから。知りたいけど、そんな関係じゃないから。
ニコリと笑うあたしに、部長も微笑んだ。