嘘つき③【-束縛-】
会社に戻ってから、


あたしはもどかしい感情を抑えるのに必死だった。ぶれない、揺るがない人になりたい。


衝動で、行動してしまうあたしが、なれる筈なんてないだろうけど。


「あ、花梨おかえり、それより聞いた?」


同期の里穂は、おかえり、が付け足しの様に、その言葉を続ける。


「部長の」


里穂の声からその敬称が出ただけであたしはまた席をたった。


「里穂、あたし部長に用があるんだった、思い出した。ありがと」


サインもらわないといけなかったんだ。


うっかりしてた。


部長と二人の空気に、仕事なんて呑まれてた。


本当に、駄目な女。


あたしは溜め息をついてすぐ吸い込んだ。


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