キミがくれた光
■Melody 3
秘密
―秘密―
冷たいマンホールの上。
鞄の中から、さっき道で渡されたちらしを出して、マンホールの上に敷く。
硬くて冷たくて汚いこの場所が、今の私にとって一番居心地の良い場所だった。
拓登はいない。
でも、絶対に来る。
昨日もここにいた。
拓登の居場所には、缶コーヒーが置かれていた。
その横には雑誌。
私が来ない日は、拓登はここで何を考えて何を歌っているんだろう。
私は、ちらしを移動させた。
拓登が昨日座っていた場所。
もたれられるからここの方がいいな。
それに、何だか拓登の温もりが残っている気がする。
ひとりになると泣いてしまうと思っていたのに、不思議と涙が出なかった。
きっとおっさんのせいだ。
おっさんと一緒に消えていく綾の背中が、とても遠くに感じた。