To You
「神原君、和野君。まだ朝学活は終わってませんよ~!!」
先生が咎めるように冗談っぽく言った。
教室がどっと笑いの渦に飲み込まれる。
きっと、先生は人を笑わせる心得があるんだと思う。
朝に1回、授業中に1回、帰りに1回、1日最低3回はうちのクラスを笑わせる。
今度教えてもらおうかな、笑いのコツ。
なんて、バカみたいなことを考えてたら、朝学活も終わった。
その途端クラスのほとんどの女子が桐生さんの周りに集まってきた。
オレと遊は、いつの間にか取り残され。
挙げ句の果てに「ちょっとどいて!!」なんて言う女子に、机からも引っぺがされた。
「うーわ。女子ってある意味すげーな」
遊が半ば呆れて言った。
オレも同調する。
その日は、ずっと教室で授業だったから、桐生さんといろいろ喋った。
桐生さんは人見知りをしない人だったから、いろいろ話してくれた。
前の学校は市内の柿ノ木坂中。
部活は元バスケ部。ちなみにオレも元バスケ部。ちょっと共通点。
長距離が結構得意で、あとは英語も得意ってこととか教えてくれた。
この時点で、オレの中での桐生さんの位置は結構上の方。
性格もいい感じだし、悪い子じゃない。
いい友達になれそう。