恋滴
一度目の記憶
好きってどんな感情だったんだっけ。

私は恋という気持を忘れて日常を過ごしてきた高校生だった。

友達の話を聞いても恋という実感が湧かないし、思い出せない。

寂しかった。

「おはよう」
「おはよー」

いつも通りの学校、見慣れた校舎、眩しい朝日が教室を白く照らす。
規則正しく並んだ机にはまばらに人が座っていて、楽しそうに話していた。

私は先に来ていた友達の夏海にいつも通りの挨拶をした。黒髪をポニーテールにした、サバサバした感じの子。美人だけれど、話すと面白過ぎて美人なのを忘れてしまうくらいでもったいない。

「ねぇ、聞いてよー昨日隆史がさぁー」

会って早々、愚痴タイムの夏海。夏海の彼氏の隆史は3歳上で今は大学生らしい。高2の私にとっては頼れるお兄ちゃん的存在だ。

私も彼氏がいない訳じゃない。

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