恋滴
私にも恋人はいる。

好きになれないけど、恋人という関係ではある。

不思議だと思うかもしれないけど、確かに恋人なんだ。好きだってずっと言っていればいつか本当に好きになれるかもしれない。
そんな期待を抱いて、毎日好きだって言う。

「しずなはどうなの?」
「いやー特に」

しずなという私の名前は特別だと思う。こんな名前見たことないし、自分自身コンプレックスになっているから本当はあんまり呼ばれたくない。

「いいよなぁーしずなは。いつも喧嘩しないで仲良くて」
「まぁ、怒らないしね私」

曖昧に笑って誤魔化す。
好きじゃないから嫉妬もしないし、疑ったりもしない。
ただ、私のことを好きだって言ってくれるのは嬉しいから別れるのは嫌だ。

私は誰かに求められたい。

お前がいなきゃ嫌だって言われたい。

他人の中に存在する充実感が欲しいんだ。

「あー好きなのになんで怒っちゃうんだろ」
「それが、好きって証拠だよ」

私はわざと明るい声を出した。こういう時の夏海はどこまでも沈んでいくから、ここで私が救い出してあげないといけない。

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