泣き恋
呼吸も気持ちも
少しずつ落ちついて、
やっと、重たい頭を持ち上げる気になった。
周りを見ると、
マンションの明かりに照らされて、
スーツを着た男の人が
少し離れた花壇に座ってるのが見えた。
足下は、さっきみた革靴。
あれから、ずっとそこに居たってこと…だよね?
「あ、あの、これ、すみませんでした」
立ち上がってあわててタオルを差し出すと、
そこには、地面に何度も叩き付けてた手の平から、
いつのまにかにじんでた血が、
ついていた。
あわてて手を引っ込める。
「洗って返します」
「いいよ。なんかキミ、
かなり大変な状況みたいだし」
「いや、でも…」
スーツのズボンについた
砂ボコリを
パンパンっと払って勢いよく立ち上がった彼は、
かなりの長身だった。