泣き恋
カイイヌ
ふと目覚めると、
見たことのない部屋。
『ここ、どこ?
あ〜、私また、”儀式”をしたんだ』
ゆっくりと起き上がると
「目、覚めた?」
遠くから男の人の声がした。
振り向いた瞬間、
昨日のできごとが一瞬でよみがえる。
「私、え?」
キッチンのテーブルでコーヒーを飲んでるその人は、
朝日を浴びていると、透き通って見えた。
少し長めの髪も、切れ長な瞳も
全体的に薄茶色で、肌も白い。
ずっと見ていたはずなのに、
気づいたときには、いなくなっている。
そこにあるのにつかめないんじゃないかって、思えるような
不思議な存在感をまとっているように見えた。
『透明な人』
勝手にそんな言葉が浮かんだ。