泣き恋

1ヶ月がすぎた頃、
私は、ようやく
通話ボタンを押した。



プルルル、プルルル、プルルル


「はい?」


「あ、紗奈だけど。今、平気?」


「ちょっと、
今までなにやってたの?

家にも帰ってないっていうし、

心配したんだよぉぉぉ」


涙声で話す真希。
懐かしい声………



「ごめん、ほんとにごめんね。

私、私…」


「…だいたいのことは友梨さんから聞いた。

正直、驚いたし紗奈の気持ち、
わかんないこともいっぱいあった。

だから、私なりに1ヶ月、考えてたんだ。


連絡できなくて、ごめん」


「ううん…」





少しの沈黙を、先に破ったのは真希だった。





「私は紗奈と同じ体験をしたわけじゃないから、
簡単になぐさめたり、励ましたりできない。

私の言葉が紗奈を傷つけるかもしれない。

でもね、

中学のときから達也と紗奈を見てきたから

言えることもあるって思うの」




ひと呼吸置いて、
真希が深く息を吸う。




「私は、あんたに何度でも言う!

あの事故は、紗奈のせいじゃない。

あれは、紗奈のせいなんかじゃないんだよ!

達也だって、そんなふうに思ってないから。


絶対に、思ってない!


もう、いいんだよ。…紗奈」





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