泣き恋
ゲンジツヘ…


最後まで、

ショウは涙を見せなかった。


出会った日に言った



「オレには、
このタオルはもう必要ないから」

って言葉が頭をかすめる。


「そのあと、
オレはここに引っ越してきた。

ここに住めば、
自分を許すなんて甘い考えは
浮かばなくなると思ったから。


でも、あの日…、

紗奈を見つけた日、

気づいたんだ」




ショウの声が大きくなる。




「オレは、間違ってた。

そんな思いは、
ただのわがままなんだよ。
結局、オレは

『辛い過去を背負った人間なんだ』

って、
自分を慰めたかっただけなんだよ。



彼女にすがって
生きていきたかっただけなんだ…。


彼女の思い出に守られて…」




この瞬間、
胸の奥が切り刻まれた気がした。




「達也にすがって
生きていたいだけ」





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