嘘つき④【-理由-】
-理由-
「愁哉、明日空けといてね」
コーヒーを持つ指先の長さが優雅で、上品で、男の癖に恨めしい。
「明日?社長も同席か?」
愁哉は、眼鏡の奥の理知的な瞳を細める。勘のいい男。
その癖、自分の事となると苛つくくらい鈍感。
「そうよ、大事な取引きだから、宜しくね。それと、今夜は付き合いなさい」
「…全く、君はいつも急だな」
愁哉は不機嫌に眉を潜める。
「スケジュール通りの日常なんかつまらないでしょ」
あたしはニッコリ笑って、目の前の秀麗な顔をした男を眺めた。
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