異人の界
エピソード1 残心
まわりくどいことを抜きに単刀直入に言う……、


俺はもう人間ではない。




だが、それではあまりにぼんやりするだろうからもう少し説明を付け足すことにする。

正直、確かなことはわからないがこういう方が一番適切かもしれない、

つまり思考や感情を支配している精神部分は俺という人間だがその器である肉体は産まれた時に親から与えられた俺の物ではすでになくなった……と。


まあその精神部分が人間であるというのは俺が今説明するのに日本語を用いて理性的に語っているというあくまで現状から推測出来るだけのことであって確信に至ることではない。

仮に精神までもが支配を受けていると専門家から言われたら否定はしない。

内も外も元の俺であるということの自信がこうも揺らぐ原因はすでに人間ではないと理解出来る肉体のあまりの変化ぶりからくるものであろう。

進化?それとも退化?いや変異?
どんな具合に変化が進行したのか誰か教えて欲しい。

それからこれはもちろん俺だけの問題ではない。
同じように苦しみ、悩んでいる者は腐るほどいる。
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