病んでいても愛したい。


そんな時――同棲してから十日目の午前三時のことだった。


「……」


神楽がいなくなっていた。


一緒にベッドで寝ていたはずなのに、起きたらいなかった。


こんな時間にどこへ、と思って部屋中確かめたけど――玄関先に神楽の靴がなかったから、きっと出かけたんだと思う。



――心配するのは当然だった。


死にに行ってんじゃないかと。


そんなことはない、私がいるんだから。と言いたくても、神楽の死にやすさは私がよく分かっている。


普通じゃないんだ、普通(日常)を捨てているのだから。


生活サイクルに死を混同させた、普通に死を交えさせて生きている人だ。


「神楽……」


自分のケータイを出して神楽のケータイに電話をする。


出ない。


部屋の中で着信音がしないのだから神楽がケータイを持っているのは確実だけど。


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