病んでいても愛したい。


チラリと朔技さんが私を見て、タバコをくわえながら床にあったティッシュで膿が出た傷口を押さえていた。


「ったく、バカバカしい。カッター処分しとくかね」


ぶつぶつとタバコをくわえての独り言。


――私にとっては、聞き逃してはならない言葉だ。


「処分って……やめて下さい」


「……は?」


灰皿にタバコを潰して、朔技さんが驚くように私を見る。


「いいの?また神楽――いや、誰やったか知らんけど、傷増えちゃうよ」


「……」


「あたしさ、傷増えて泣きそうになったあんたいたから、処分しようって思ったんだけど」


「自傷は……、神楽にとって“死ぬ行為”に繋がるわけじゃないから……」


< 113 / 127 >

この作品をシェア

pagetop