病んでいても愛したい。
「錐恵(きりえ)は食べないの」
「バイト前に軽く食べた、だからまだお腹は減っていない」
パクパク行く彼の口が閉じる。ああ、そうかと少し顔が曇った。
「バイト、休ませちゃったね。九時まで会えないって言ってたのに」
壁にある時計は六時ごろだ。
それを見て彼はごめんという。
伏し目がちで、どこか瞳孔の色素が薄くなっているような――要は死にたがりやの目が神楽だ。
「いいよ。バイト休めて、神楽に会えたから嬉しい」
どうぞとレンゲを差し出せば、パクリと食べてくれた。
残りは三分の一といったところだろう。
これ以上はさすがに無理かと顔色の変化から分かったので、レンゲを手放した。
器でコロンとなるレンゲを見て、薬袋を手にする。