病んでいても愛したい。
玄関からリビングに繋がる廊下を十歩分進む。
扉を開ければリビング。
ソファーとガラステーブル。棚があるだけでテレビなんかない静かな部屋。
「よお」
ソファーに座らず、フローリングで足を伸ばす彼がいた。
軽く眉をひそめる。
見た感じで――ああ、深(しん)かと実感した。
「神楽は?」
「引っ込んでる」
「深だよね」
「ご名答」
「……、血」
「ああ、あの馬鹿やろうがまた切りやがった。気にすんな、止血してっから」
座る深の隣に私が膝を折る。
止血しているという深はタオルを左手首にあてて、右手でぎゅっと押さえていた。