病んでいても愛したい。


「だから、俺が錐恵の意思を無理やり奪う。選択権を与えない、無理やりに君の願望を叶えよう。

意思を奪い、願望を叶える。言葉にしたら、素敵じゃないか?」


「意思は大切だと思うんだけど。私は神楽以外に色々と“持っちゃってる”から」


「俺は君しか持っていない。君しか……君だけでいいよ」


「……」


「……」


沈黙する中、衣擦れの音がやけに耳についた。


後は吐息。私のだ。


「ずっと一緒にいよう、錐恵。俺はずっと君を愛しているから」


「……、分かった」


承諾したのは、私もそうしたいと思っていたから。


彼の言うとおりだった。


願望を叶えるために全てを捨てる勇気は私にはない。


だから、他人によって無理やり叶えさせてもらうのは都合がいい。


< 30 / 127 >

この作品をシェア

pagetop