病んでいても愛したい。
フローリングを赤く染める液体。
窓近くに投げられたであろうカッターが一本。刃がむき出しのままで、カーテンの隙間の光を浴びて――銀につく赤色を見た。
「痛い、よね」
「当たり前だ。医者行きてぇけど、また縫われんのは嫌なんだよな。
この前縫われた糸ごと切ってさ。ぶちぶち自分で抜糸してんのあいつ」
「病院、行こうよ」
「じゃあ、お前が神楽に直接言ってくれよ。俺が言っても、あいつになればまたぶちぶち自分で糸抜くぜ」
「神楽、出して」
「あー、待ってろ」
目を瞑る深。
左腕を押さえる力が弱まり、タオルが落ちそうになったので私が押さえた。
十秒ぐらいして、タオルを持つ手に力が入る。
「反応ねえや……。しばらく帰ってこなさそうだな」
チッと舌打ちした深。
私は落胆した。
タオルを押さえた手を引いて、寝室から救急箱を持ってくる。