病んでいても愛したい。


「あるよ、ギリギリ。朔技、さんか。会ったことないな」


朔技という言葉で出たのは、女二十五才ということだけ。神楽からの情報はそこ止まりだった。


「会わねえ方がいいって。つうか、全員に会わなくてもいいだろ。お前は神楽の彼女なんだから」


「全部を受け止めたいっていうのはいけないことかな」


「やめとけって」


救急箱を深が奪う。
自分で手当てするらしく、ガーゼを出して。


「お前じゃ、“俺たちは抱えきれない”から」


外したタオルの下から出たのは、掘削機にかけられたような手首。


消毒液を塗ったりして、ガーゼを貼ろうとしても一気に赤く裏写りした。


いってー、と言う深。

でも手慣れた様子で右手だけでガーゼを貼り、包帯を巻こうとしていた。


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