病んでいても愛したい。


“己が手を見て、握りしめる。

伸ばした前髪のまにまに、手に落ちた液体と髪を濡らしたわずかの水。

膝をつき、頭をさげて、首を折る。

暗い中、もがきはせずに受け入れよう。

だって、私はここにいてしまったんだから”



首に爪を立てる誰かの後ろ姿。さっきと同一人物だと思う。


真っ赤なマニキュアが目立つ。


女なのかなと予想してみた。髪が長くも短くもない中途半端だから分かりにくい。


首の肉を今にもえぐり出すような一枚だ。


先ほどとこれ。


「十六夜……」


彼女が思うことが何となく分かってしまう私も異常者なんだろう。


虚無が実無――虚脱感が現実に顔を出す。

己が抱くは虚空の実無なき悲しみ――形がない自分の心にあるモノに汚染されるさま。


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