病んでいても愛したい。


どうにも、寝ている“神楽”を見てしまうと、そばにいたくなる。


紛れもない神楽。
寝息や寝顔、ほら触れた時の感度だって同じ。


これが十六夜ならば襲われてしまうかもしれないけど――寝ているこの人は神楽の体だ。



――抱きしめてほしい。



私は与えるだけの存在じゃない、貰いたいんだ。


愛情、愛情が欲しい。


十六夜ではダメなんだ、私が一番に欲しいのは神楽のなんだから。


「神楽……」


名を呼んで、その人の隣に寝る。


横向で寝る彼の真正面、毛布の中で体を丸めて、彼の胸板に鼻をつけた。



頭から伝わる寝息。
大きな男の人である手をこっそりと握った。


久々にドキドキしたような気分になった。


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