病んでいても愛したい。


自分が乙女であることを図らずも感じるのが今。


彼の胸板に顔をつけ、息を吸う。落ち着く匂い。



耳で神楽の寝息を聞くのも、なんだかオルゴール感覚で私まで安らかな気分になる。


大好きという感情の現れだ。


服を掴み、彼が抱きしめてくれないから私が抱いた。


「……、ん」


心臓が鳴る。

神楽が声を出したせいで。


ゆっくりと顔を上げれば、瞼をぴくりとさせた顔を見た。


「神楽……、神楽」


「……」


呼びかければ、彼が目覚める。


目覚めるなりに、彼は私を抱きしめてくれた。


互いに横向き。
きゅっと体温を共有して。


「また……嫌な夢を見たよ」


ぼそりと彼が呟く。


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