修学旅行★幼なじみと甘いキス
「……」


しばらくの間
今の翔たちのプレーを、まるで息をのむように見つめていたあと

突然、あさみちゃんが大きく口を開けた。


「――う、
うわぁ~!わ~!
ねぇ見た?!今の!ちゃんと見た!?
今新垣くんがシュート入れようとしたら
あの9番の人がいきなり横からシュッ!と入ってきて、しかも上にポーンって!」


「あーもう。あさみが言いたいことは分かったから。
いいかげん落ち着いて見ててよ、お願いだから。試合に集中できない」


バシバシと二人の肩をたたきながら
声をあげてはしゃぐあさみちゃんに、詩織ちゃんは少しイラッとした様子。


だけど、こんなやり取りにはもうすっかり慣れているのか

あさみちゃんは、特に気にしてない様子で「あは、ごめん」と笑って返したかと思うと
大きく息をはいた。


「はぁ、それにしてもやっぱすごいなぁ。
だってあんなにいっぱい動いて、しかも一人でたくさん得点だって入れてるのに。
本人は疲れたそぶり一つ見せないで淡々としてるし、ほんとすごい…」


そう言って、向こうにいる翔の方へジッと視線を送りながらも

あさみちゃんはどこかふと、曇った表情をのぞかせた。


「でも逆を言えば、情けすら一つ無いっていうか…
はっきり言って容赦ないよね?9番の彼…。
あたしは詩織みたく
スポーツ得意じゃないし、詳しいわけでもないから。
そういうの、よく分かんないけど。
でもさすがに今のは――。
……たしかに正々堂々と本気で勝負するからには
お互いの勝ち負けとかが一番
重要になってくるのかもしれないけど…。
でも1点くらい、あの瞬間くらいは新垣くんにシュート
入れさせてあげても、良かったような…」


「や、どー見てもあれはチームの勝ち負け以前に
新垣くん【個人】に対してシュートを入れさせないよう
わざとあのタイミングで割り込んでボールを奪い取ったようにしか見えなかったけどね、わたしには」


詩織ちゃんの発言に驚いて、思わずわたしが「エッ」と顔をあげたのと同時に

側にいたあさみちゃんが大きく口を開けた。
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