修学旅行★幼なじみと甘いキス
そんなわたしの想いとは裏腹に

翔たちのいる試合はますます緊迫化していった。


「直哉のやつ、すげ…」

「もう結果は分かりきってんのに、よく頑張るよな」

「けど今さら直哉が得点入れてくれたところで、俺らのチームが勝てるわけねーよ…」


時刻は試合がタイムアップする約10分前。


この時点で、既に大きく差が開いてしまっている両チームの結果に、

さっきまで何とか躍起になっていたはずの青チームの男子たちも

ひとりふたりと、徐々にボールを追いかける足を遅め
あきらかに諦めの色が見え始めている。


そんな中、直哉くん一人だけは、なおも懸命にゴールを入れようと頑張っていた。


「…ッ!」


でもそのたびにあの翔が必ずと言っていいほど阻止してきて


敵の攻撃をくぐり抜け、やっとの思いで直哉くんが送り出したボールも

あと少しという所でゴールの柱にぶつかり、コート外へと跳ね返った。


「ハァ、ハァ…。い、いきなりどうしたんだァ?翔のやつ」

「さっきまではゴール決めても表情ひとつ変えなかったのに、
あの直哉ってやつが入ってきたとたん、急にムキになってね…?」


前半戦の時には少しも垣間見えなかった、翔の変わりように

それは相手チームの男子たちだけでなく

同じチームのメンバーまでもが戸惑った反応を隠せないようだった。


「……」


そしてその違和感は

今あそこにいる直哉くん本人にも、おそらく伝わったんだと思う。


直哉くんはゴールを逃したきり大きく肩を動かして、そこに立ち尽くしたまま…

らしくもなく、汗だくになって息をしている翔の背中を、黙って見つめていた。
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