修学旅行★幼なじみと甘いキス
「……」


ピリピリと張りつめた空気の中


今もあそこに立つ翔は、目の前の直哉くんを睨むようにして向かい合い

口を固く閉ざして黙りこんだまま、お互いのボールを奪うタイミングをうかがっていた。


「…広瀬くんだっけ?
そこまでして、キミがやたら俺にムキになってる理由って
もしかして、――加奈子ちゃん…?」

「!」


あとわずか数秒で試合が終わる、その直前。


ボールを足で上から押さえつけたまま、ジッと立ち止まっていた直哉くんが

翔に対して突然、何か口を動かした気がした。


その言葉に、翔は思わず動揺したのか

一瞬の隙を見た直哉くんが
勢いをつけて走り出し、すぐに片足を大きく振りあげる。


「くそっ!入れさせっかよ…!」


目の前のゴールめがけ
直哉くんの強く蹴り出したボールが一直線に飛び、突っ切ったのと同時に

それを阻止しようと割りこんできた翔の腕が、勢いあまって直哉くんの肩とぶつかる。


「……ッ!?」


その勢いでとっさにバランスを崩した二人は
お互い、もつれ合うようにして下へ転がる。


そのまま一気に地面へ引きずられながら


「ピピ―ッ!」というホイッスルの音が強く鳴り響いたのと同時に


ズササーッ!と、もの凄い音を立てて二人がピッチに倒れこんだ瞬間

その場から身を乗り出したわたしは思わず――無意識にこう叫んでいた。



「――!! 直哉くん!!」





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