修学旅行★幼なじみと甘いキス
「加奈子ちゃん…」

「!」


でもそのとき
すぐ側で、あの直哉くんの呼ぶ声がしてハッとする。


するとそこには
どこかやるせない瞳をした直哉くんが、
まるで行って欲しくないと心で訴えるように
ギュッとわたしの手を握りしめていて…



「…っ、何でもない。早く行こう」



そんな直哉くんに胸の奥がズキッと痛んで
わたしは自分の気持ちを抑えこむように俯く。


そのままバッと顔を背け、
直哉くんと一緒に、みんなのいる所へ戻ろうと走り出した瞬間、
後ろで翔がこう叫んだ。



「…待ってる!」

「…!」

「加奈子からの返事、ずっと待ってっから!」



その言葉に、思わずわたしの足がピタッと動けなくなって
もう一度だけ後ろを振りかえる。


すると、そのとき見た翔の表情は

この15年間、一度も目にしたことがなかったくらい…

とてもまっすぐ、切なげな瞳をしていて…



「……っ」



そんな翔の姿に、内心ひどく動揺しながらも


急いで目をそらしたわたしは

何も答えることなく、黙ってこの場をダッ…!と駆け出していった。
< 348 / 473 >

この作品をシェア

pagetop