修学旅行★幼なじみと甘いキス
「もしかして広瀬くん…――?」

「えっ…」


ふいに翔の名前を聞かされ、思わずわたしの心臓がドキッと反応する。


「あ、う…その……」

「……」


とっさに否定することもできず
顔を赤くしたまま、すっかりうろたえるわたしに

それを見た直哉くんはこのとき、一瞬ピクッと肩を揺らしたかと思うと、急いでごまかすように笑った。


「…そか。やっぱり、悩むよな。あんなこと言われたら」

「え?」

「もう、加奈子ちゃんがイヤがるようなことしないから」



あ……



「誤解させるようなことしてごめん」




――ドクン


そう言って
さっきまでの取りつくろってみせたような明るい笑顔は消え、

どこか一瞬
物悲しげな表情をした直哉くんに、わたしは何も言えなくて。



「おっせぇよ直~!なにしてたんだよ」

「はは、ごめんごめん」



スッ…とわたしの横を通りすぎたかと思うと
まるで何事もなかったように
勇樹くんたちの所へと走って行ってしまった直哉くんに


しばらくして不思議に思った様子のあさみちゃん達がパタパタと戻ってきた。



「どうしたの?加奈子?大丈夫?;」

「直哉くんだけ一人で走って来るからビックリしたよ。
何かあったの?」


向こうでは今も男子たちとごく普通に話してる直哉くんを見て
二人は心配そうな顔を浮かべてる。



「……加奈子?」



それでもこの時、わたしはもう何も答えられなくて

あさみちゃん達の呼ぶ声すら耳に届かないまま、ただジッとその場に立ち尽くしていたんだ。
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