修学旅行★幼なじみと甘いキス
「…さぁ。そこまででもないんじゃね。
あいつ、ああ見えて物分かりがイイっつか、けっこー肝据わってっし。
それにさっき俺が別れ切り出したときも、あいつ特に怒るわけでも泣くわけでもなく
ただ笑顔であっさり“分かった”つって」

「え……」

「ぶっちゃけ俺もそう簡単には納得してもらえねーだろと思って
引っ叩かれんのも、泣きわめかれんのとかも全部覚悟して言ったけど、まぁアイツらしいっつうか。
…今考えると、向こうもそれなりに覚悟してたんじゃねーのかなって。
あんときの俺に告ってきた時点で、そのなんつーか、いずれ…こうなるっての」

「……」

「もし今みたく、加奈子が俺に振り向いてくれなかったとしても、
どっちみち俺はやっぱお前を忘れらんなくて、結果もっとアイツを傷つけたはずかもしんねーから」



――だから、その傷がまだお互い浅いうちで、逆に…良かったんじゃないかとも思ってる。



そう呟いたときに見た翔の背中は、
心なしかいつもより後ろ姿が少し丸くて、わたしの気持ちは複雑になる。


それでも何一つイイ言葉も掛けれなくて

ただ一言「そっか…」と小さく苦笑いしてみせたわたしに、

翔はまるで何かを押さえきれなくなったように
突然ピタ、と歩く足を止めるとこう言った。
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