Iam金魚
序章
電車の中でビニールを手に小走りしている男がいる。オールバックだが人相は悪くない。どちらかというと美形だ。年は三十代だろうか?
それを追うように母と娘が小走りしている。
母はスマートで美人でやっぱり三十代くらい、娘は腰までの髪の毛で人形のように可愛らしい。小学生の低学年だろうか。
駅で慌てて男が降りる。
娘が叫ぶ。
「パパ待って!」
その声に反応し、急に立ち止まった拍子に手からビニールが電車の先頭の前の線路に落ちる。
「あっ!!」
3人が慌てる。
素早かったのは母だった。近くにいた駅員に声をかけ、ビニールを取ってもらう。
「ゆかり!!それを渡せ!」
「嫌よ!和幸さんは間違ってる!!これは園実だって可愛がっているのよ!!」
そう言ってやってきた電車に飛び乗る。和幸も慌てて乗ろうとするがドアが閉まってしまい、ゆかりと園実を乗せて電車は出発した。
電車で座れた2人は心配そうにビニールを開ける。
中に金魚がいた。
落としたせいか水が少ない。
園実が小さい声で言う。
「大丈夫?みみ」
すると小さな声で「うん」と金魚が答えた。
園実はしーっと指を口にあて辺りを見回す。誰もみみの声には気付かなかったようだ。
みみは大きめの金魚だ。赤と白のコントラストが鮮やかで綺麗な金魚と言っていいだろう。
その金魚が話す…この事実が親子の追いかけっこの原因のようだ。
ゆかりはため息をついた。「家には帰れないわね。まったく…そうだ、ホテル泊まろうか?」
「ホテル?綺麗?」
嬉しそうに園実が聞き返す。
「うん、綺麗なホテルにしましょう」
ゆかりは園実に微笑んだ。
この親子に何が起こっているんだろうか?
それを追うように母と娘が小走りしている。
母はスマートで美人でやっぱり三十代くらい、娘は腰までの髪の毛で人形のように可愛らしい。小学生の低学年だろうか。
駅で慌てて男が降りる。
娘が叫ぶ。
「パパ待って!」
その声に反応し、急に立ち止まった拍子に手からビニールが電車の先頭の前の線路に落ちる。
「あっ!!」
3人が慌てる。
素早かったのは母だった。近くにいた駅員に声をかけ、ビニールを取ってもらう。
「ゆかり!!それを渡せ!」
「嫌よ!和幸さんは間違ってる!!これは園実だって可愛がっているのよ!!」
そう言ってやってきた電車に飛び乗る。和幸も慌てて乗ろうとするがドアが閉まってしまい、ゆかりと園実を乗せて電車は出発した。
電車で座れた2人は心配そうにビニールを開ける。
中に金魚がいた。
落としたせいか水が少ない。
園実が小さい声で言う。
「大丈夫?みみ」
すると小さな声で「うん」と金魚が答えた。
園実はしーっと指を口にあて辺りを見回す。誰もみみの声には気付かなかったようだ。
みみは大きめの金魚だ。赤と白のコントラストが鮮やかで綺麗な金魚と言っていいだろう。
その金魚が話す…この事実が親子の追いかけっこの原因のようだ。
ゆかりはため息をついた。「家には帰れないわね。まったく…そうだ、ホテル泊まろうか?」
「ホテル?綺麗?」
嬉しそうに園実が聞き返す。
「うん、綺麗なホテルにしましょう」
ゆかりは園実に微笑んだ。
この親子に何が起こっているんだろうか?
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