彼女にキスの花束を


「ちょっと、待って……」
彼女はそういうと大きく三回息を吸った。


そして静かに顔をあげ、僕の顔をみて


「…好きです」


小さく呟いてくれたんだ。

ほんとに蚊の鳴くような声だったんだけど僕にははっきりくっきり聞こえたんだ。

くっきりは合ってるかわからないけど。


「理由、聞いてもいい??」

できるだけ優しく問い掛けた。

「あのね、もしかしたら覚えてないかもしれないんだけど、始業式が終わってからグランドに行ったでしょ?」

始業式の日……。

「行ったかも…」

確か悠斗が陸上部の見学行きたいとか言ってついてったんだっけ。

「そのときね、あたしも見学にいたんだけど」

中城さんも?

あの時いたのは僕ら二人と女の子が二人……


「あっ!!」

「想いだし、た?」

「…うん。」


でも、あの時は…

「凄く嬉しかったんだ。みんな見ない振りして避けてかれて誰も助けてくれないんだって思ったの。」


そうだ。はっきり思い出した。
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