【完】アニキ、ときどきキス
「あ、山田先生ここで」


「え、ここですか?」


山田先生が慌ててブレーキを踏む。


「ここ、七瀬遥さんのアパートですけど?」


「ええ。ここで。
いつも寄っていってるんです」


「そうなんですか。
北原先生熱心ですね」


山田先生が感心して、ウンウンと頷く。


ダメだ、褒め言葉に反応して、顔が勝手ににやけちゃうよっ。

自分の頬をパチンと叩いて、喝を入れた時だった。


「あれ?」


山田先生が目を細めて、前のめりになる。

まだ明るさが残る夏の夜。


アパートの扉が開き、新君が出てきた。


「え?なんで?」


山田先生が驚く。

そうか、山田先生は新君が遥のお兄さんだって知らないんだもんね。



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