【完】アニキ、ときどきキス
「あ、そうだ。これ」


私は鞄の中からチョコレートを取りだした。


「お。待ってました」


「ごめんね、手作りじゃなくて・・・・・・」


「いいって。
卒業式の準備で忙しいんだろ?」


新君は嬉しそうに、チョコレートの包み紙を開ける。

ぺっこりとえくぼがへこんだ新君の横顔。

こうして、隣に新君がいて、それを隣で見て。
ずっとこうしていたいなって思った。


「ねえ、仕事辞めたって言ってたけど、その・・・借金のこと一段落したの?」


「うん。無事!
俺の両親が作った借金は返済完了。
尾崎さんのところも、今年は美帆が日本に帰ってくるから大丈夫だって言ってくれた」


「そっか。じゃあ、これからどうするの?」


「うん・・・あのさ、そのことなんだけど・・・・・・」


新君は何か言いたげに、チョコをツンツンとつついた。


< 219 / 231 >

この作品をシェア

pagetop