【完】アニキ、ときどきキス
「あの!ちょっと待って下さい!」


悲しげな表情の後の微笑みが、どうも引っかかった。

私は無意識に遥のお兄さんの腕をギュッと掴んでいた。


「私、遥さんが一方的に悪いんじゃないんだと思うんです!
だから、だから・・・・・・そんな悲しそうな顔しないでください!」


私は感じていた。

きっと遥のお兄さんの悲しげな表情の後の微笑みはそういうこと。

前の先生は遥のことをずっと悪く言っていたに違いない。

そして遥のお兄さんはそのことで、傷ついていた。

だって、家族だもん。
悪く言われたくなんかないよね。

私の直感がそう感じた。


事実がハッキリしていないのに、遥を『そういう子だ』って決めつけちゃいけない。


遥のお兄さんは、何も言わず、じっと私ことを見つめている。


「フッ・・・・・・フフ」


「え?」


遥のお兄さんが突然笑い出した。

そしてポケットから眼鏡を取り出し、かけた。

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