【完】アニキ、ときどきキス
「新君だよ?」

新君は、スーツの埃をパンパンとはらいながら、立ち上がった。

そしてポケットからハンカチを取り出すと、私の唇を優しくふいた。


「ごめん。口紅伸ばしちゃった」

新君はイジワルそうにニンマリと微笑み、私の目を覗き込む。


シューッ!!!


私は沸騰したやかんみたいに自分の熱を体内から出したくてしかたなかった。

恥ずかしさが限界を超えていた。


私は新君の手をパチンと弾き、自分の袖でゴシゴシと唇をこすった。


「そんなに嫌だった?」


新君は寂しげな表情で私を見つめる。


そんな目で見ない・・・でよ。

なんて答えたらいいか分からなくなるじゃない。


< 29 / 231 >

この作品をシェア

pagetop