君の詩を聴かせて



「保健室行こうぜ」

「ああ…うん、」


 そう言って立ち上がった瞬間、予鈴が鳴り出した。

 祥次まで連れてかないほうがいいよな…。

 なんとか歩けるみたいだし。


「俺1人で行くから、祥次は授業受けててよ」

「でも…」

「じゃあよろしくー」


 ふらふら手を振って教室を出る。

 まだ廊下に残っていた生徒たちが俺を見て止まった。

 鈍く痛む頬はきっと赤くなってるんだろう。

 だんだん口の中に血が溜まってきた。

 あー早く出したい。

 のろのろと1階の端に向かう。

 運がいいのか、先生には会わなかった。

 コンコン、と2回ノックする。

 それから横にスライドさせて保健室に入った。


「失礼しまーす」


 さっき水道でゆすいできたから喋れる。

 めったに血出さないから怪我すると止まんないんだよな …。


「蕪木くん?珍しいねー、どうしたの?」

「まあいろいろあって…湿布もらえますか?」

「いろいろって…もう、」


 なんとか消毒してもらって、湿布を左頬に貼る。

 くっさーい…おえっぷ。



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