君の詩を聴かせて



 …なんて、切ない曲。

 俺は切ない曲しか書けないのかもしれない。

 なんとなく、そう思った。

 別にそれでもいいんだけど。

 たまには幸せなうたとか作りたい。

 …作れるかわかんないけど。

 本屋を通り過ぎようとしたけど、なんとなく立ち寄ってみた。

 ぶらぶらと中を見ると、お菓子本のところで

 …円香に似た人を、見付けた。

 ゆっくり近付く。

 円香は、前は不器用だったのにいつの間にか料理上手になっていた。

 だから多分、バレンタイン用のお菓子かな…。

 近寄ってみて、やっと円香だと確信した。

 周りの中学生に比べると少し長いスカートがその証拠。

 3年の始めの頃は短かったんだけど、これもいつの間にか長くなっていた。

 って言っても、太ももの真ん中ら辺なんだけどね。

 そのくらいがちょうどいいと思う。

 俺、短いの嫌いだし。

 ブレザーの下から白いセーターが覗いていた。

 ほんっと円香の周りって、白ばっか。

 似合うからいいと思うけど。



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