君の詩を聴かせて



「円香、何やってんの?」

「っうわ、大和!
 …びっくりしたぁーっ」


 本を抱きしめてほっと息を吐く円香。

 本のタイトルは『これであの人もイチコロ☆本命チョコ』だった。

 円香…本命いたんだ。

 そう言えば浅野がダーリンがどーのって言ってたっけ。


「本命チョコ?」

「え、あ…!…まぁ、」

「ふーん」


 女の子って大変だなぁ…。

 本命チョコとか、義理チョコとか、友チョコとか…。

 チョコ尽くしで自分まで茶色くなりそう。


「大和は何でここにいんの?」

「なんとなく、もう帰るよ」


 家帰ってうた作りたいし。

 作れなくっても、練習したい。


「じゃあちょっと待ってて!
 これ買ってくるから!」

「ん、わかった」


 レジに向かう円香を見送って、出入り口に向かう。

 ここで待ってれば気付くだろう。

 数分して、円香が来た。


「ごめん、お待たせ!」

「いいよ、行こ」


 ぼーっと暗くなり始めた空を見ながら歩き出す。

 綺麗な夕空だ…うん。



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