君の詩を聴かせて
…なんて、俺には出来ないのだけれど。
イマドキの中3にそんなことできるわけがない。
…っつー俺のほうが変なのかもしれない。
まず相手もいないけど。
――蕪木 大和
受験生真っ只中の最中、現実逃避のためにストリートライブを始めた。
そんな俺のうたを聞いてくれる人なんか――いない。
そのはずだった。
アイツが俺を見つけるまでは。
「大和!またやってる…」
「…また来たのかよ…」
つんとする鼻を抑える。
白いファーの帽子に白のダウン姿。
――川口 円香
「あのね!あたしは大和と違って塾の帰りなの!
あんたと違って暇じゃないんだから…っ」
わーわー喚く円香をそのままに、時間を確認した。
9時27分…。
よくこんな時間まで勉強するなぁ…。
俺なら無理だね。
「――…って、聞いてる!?」
「きーてるきーてる」
「聞いてないでしょ!」
あーもーうるさいなぁ…。
とりあえず俺も帰るかなぁ。
どーせ円香と近所だし。