君の詩を聴かせて







 さりげなくボタンを見る。

 良かった、まだ誰ももらってないみたい。

 大和モテるのに…人気がないところにいたからかな。

 そっちのほうが、あたしとしては嬉しいんだけど。


「これからファミレスで打ち上げするんだって。
 大和は行かないの?」

「うん、面倒だし」


 やっぱり…そう言うと思った。

 昔から大和は何にでも無頓着だった。

 あたしも…周りの人と、変わらないのかもしれない。

 これがきっと、もう最後。

 もう毎日会うことなんて…出来なくなるんだよね。

 だったら…後悔、したくないの。


「大和…第2ボタン、ほしい」

「ボタン?別にいいけど、はい」


 あっさり渡されたボタン。

 こんな簡単にいいのかな…?


「えっ、い、いいの!?」

「何が?」

「だって、その…第2ボタンの話、知ってるでしょ?」


 昔から言われてるし…。

 大和は本とか読むから、ちゃんとした意味もわかってるはずなのに。

 これは、遠回しの告白だ…って。


「ああ…でも、思い出としてでしょ?」

「……っ」


 違う、大和は意味わかってないよ…。

 どれだけあたしが、勇気出したか。

 毎年、チョコに込めてた想いも…。

 大和は…気が付いてなかったんだね。

 なら…今、言うから。



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