君の詩を聴かせて
アコギをケースに閉まって立ち上がる。
「…どっか移動すんの?」
「まあ、円香も帰るんだろ?
どーせお客もいないし、今日は帰るよ」
「ふーん…」
それに…幼なじみとして、1人で帰らせるのもアレだしさ。
今日もこのパターンで、結局円香と一緒に帰ることになるんだよなぁ。
別に気にはしないけどさ。
「てか、大和もいい加減勉強しなよ!
あと2ヶ月もないんだよ!?」
「え、あー…うん」
「うた歌ってる場合じゃないんだって!」
1歩前で止まって、ビシッと人差し指を立てて俺に言う。
俺より焦ってるその顔を見ても、何も思わない。
そんなに焦ったってなぁ…落ちるときは落ちるし。
仕方ないと思うんだけど…あ。
「円香、唇荒れてる」
「――ッ!」
ふに、と円香の唇を触った。
かさかさしてるし…痛そー。
冬は乾燥するしなー。
そんなことを考えながらまた歩き出した。
「置いてくぞーあれ、お前顔赤くない?風邪?」
「っ…大和のばーか!」
「ばかですけど」
何を今さら。