君の詩を聴かせて



 俺がバカなの知ってるはずだよな…?


「もう、うるさいっ!」


 ずんずん歩いてく円香。

 機嫌悪いなー。

 絶対勉強のしすぎだって。


「そう言えばこの間そこの公園で変質者出たんだってー」

「……っ」


 面白いくらいにピタリと止まる。

 そういえば前に誘拐されかけたんだっけー。

 大股で近寄って顔を覗き込む。

 うわーさっきまで赤かったのに真っ青。


「ほら行きますよー」


 空いてる左手で円香の右手を掴む。

 あったけー。


「ひいっ!大和の手冷たいっ」

「そりゃずっと外にいたらな…。
 触られたくなかったらさっさと来いよ」

「…うん」


 円香のペースに合わせてゆっくり歩く。

 会話の内容は、学校のこととかクラスの奴のこと、先生のこと

 そんなクダラナイ話。

 でもずっと昔から一緒だったせいか、沈黙も気にならない。

 たぶん、円香もそう。

 しばらくするとT字路に出る。

 左に2つ行ったら円香の家、右に5つ行ったらうちだ。


「じゃあおやすみ」



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