君の詩を聴かせて



「髪切って、そのあと染める」

「…ちなみに何色?」

「……デイノテリウムの皮の色」

「うん、却下」

「…ちっ」


 デイノテリウムの皮の色ってつまり濃いグレーだろ?

 あり得ない…。

 しかも琉愛のことだからいろいろ混ぜそうだし…。

 染めるの上手いってのはわかるけど。

 琉愛の髪の色は綺麗なレッサーパンダの背中の色、つまり赤茶。

 ムラもないし、本当に上手いんだと思う。

 デイノテリウムの皮の色は勘弁だけど。

 せめて、せめてイイズナのチョコレートブラウンがいい…!


「チョコレートブラウンじゃだめ?」

「…平凡」


 いや、チョコレートブラウンって平凡?

 普通って茶色とかじゃない?


「ほら、イイズナの背中と肢と尾は茶褐色からチョコレート色だろ?
 だからチョコレートブラウンなんてどうかなぁと思ったんだけど」


 ちらっと琉愛を見る。

 きっと…多分、食いついてくるはず。

 琉愛って哺乳類の中でもイタチ科好きだし。


「イイズナ…」


 あ、ちょっと狼狽えてる。



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